「何度言っても忘れる」、「提出物が出せない」
「好きなことは何時間も集中するのに、勉強はなかなか始められない」
そんな姿に、
「やる気がないのでは?」
「だらしないだけでは?」
と感じたことはありませんか?
ADHD(注意欠如・多動症)は、本人の努力不足や性格の問題ではなく、脳の特性によって日常生活に困りごとが生じる状態です。
その現れ方は、一人ひとり異なります。
今回はADHDの特性と子どもとの関わり方のヒントをご紹介します。
ADHDというと、
「じっと座っていられない」
「教室を歩き回る」
といった多動性・衝動性のイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし実際には、忘れ物やなくし物が多い、話を聞き漏らしやすい、提出物を出し忘れる、片付けが苦手といった「不注意」が目立つタイプもいます。
一見ぼんやりしているように見えても、頭の中ではさまざまなことを同時に考えていて、目の前のことに集中し続けることが難しい子もいます。
そのため「話を聞いていない」「やる気がない」と誤解されることがあります。
ADHDの子どもによく見られる特徴のひとつが、「わかっているのにできない」という状態です。
宿題を出した方がいい、忘れ物をしない方がいい、時間を守った方がいい。
そういったことは、本人もちゃんと理解しています。
それでも、うっかり忘れる、途中で気がそれる、別のことに意識が向いてしまう。
大人から見ると「わかっているならやればいいのに」と感じるかもしれませんが、本人も「やろうと思っていたのに忘れた」ということが少なくないのです。
毎日、頭の中にたくさんの映像が流れ、雨が降ったり、虹がかかったり、好きな音楽が流れたり、ふと思いついたアイデアが飛び出したり。
そこに目の前の現実世界も同時に存在しています。
ADHDの特性がある子どもたちは、そうしたさまざまな情報に次々と反応しているため、頭の中は常にフル回転。
目の前のことに集中し続けることが難しくなったり、話を聞き漏らしたり、別のことに気を取られたりすることもあります。
もしあなたがそんな状態で一つのことに集中しようとしたら、なかなか大変だと思いませんか?
これを知ったあるお母さんが「あなたの見えている世界は、もしかしたらこんな感じなの?」と子どもに尋ねると、その子は目を輝かせながら「なんで知ってるの!?」と答えたそうです。
自分にしか見えていない世界をわかってもらえて、とても嬉しそうだったといいます。
感じ方には個人差がありますが、「どうしてできないのだろう?」という見方を「どんなふうに見えているのだろう?」と少し角度を変えるだけで、子どもの反応が変わることもあります。
複数の情報を同時に処理することが苦手な場合があります。
たとえば朝の支度。
着替える、朝食を食べる、持ち物を確認する、時間を気にする……たくさんの情報が一度に押し寄せるため、体操服だけ忘れる、宿題だけ入れ忘れる、水筒だけ置いていく、といったことが起こります。
ボタンの掛け違いや持ち物不足、提出物の出し忘れなども、本人には気づきにくいことがあります。
NG →「何回言えばわかるの!」
推奨 →「忘れなくて済む仕組みを作る」
持ち物リスト、玄関チェック表、写真による見える化など、本人の努力だけに頼らない工夫が役立ちます。
ADHDの子どもたちは「覚えていない」のではなく、「覚えていたのに抜けてしまう」ことが多いもの。
本人任せにせず、一緒に確認できる環境づくりが大切です。
NG → 「早くやりなさい!」
推奨 → タイマーを使う/手順を見える化する/好きなキャラクターや興味を活用する/短い時間から始める
など、その子に合った方法を、一緒に探していくことが大切です。
発達特性は、一つだけで現れるとは限りません。
ADHD+DCD(発達性協調運動症)では、字を書くことや整理整頓の苦手さ、不器用さが加わることがあります。
ADHD+ASDでは、切り替えの苦手さ、こだわり、対人関係の難しさが重なることもあります。
同じADHDでも、困りごとは一人ひとり大きく異なります。
できないことを叱り続けても、なかなか改善しないことがあります。
発達支援の現場でよく使われるのは、作業を細かく分ける、一度に求める量を減らす、小さな成功体験を積み重ねるといった方法です。
大きな目標を一気に目指すより、「今日はここまでできた」という小さな積み重ねが、自信や自己肯定感につながっていきます。
ADHDの特性を知ることで、これまで叱っていたことの見え方が変わることがあります。
だからといって「特性だから仕方ない」で終わりではありません。
困りごとが起きにくい環境を整えながら、ルールや約束、人との関わり方を少しずつ身につけていくことも大切です。
その子に合った方法を探していくことで、親子ともに過ごしやすくなることがあります。
理解することは、諦めることではありません。
困りごとに注目されがちなADHDですが、強みにつながる特性もあります。
好奇心旺盛、発想力が豊か、行動力がある、興味のあることへの集中力が高い。
環境や関わり方によって、その力が大きく伸びることもあります。
子どもの困りごとが続くと、つい「どうしてできないのだろう」と考えてしまいます。
そんな時は、
「何ならできるだろう」
「今は何ができているだろう」
という視点で見てみるのも一つの方法です。
できていることを足がかりにしながら、その子に合った方法を一緒に探していく。
その積み重ねが、自信や成長につながっていきます。
成長のスピードは子どもによってさまざまです。
周りの子と比べると変わっていないように見えることもあるかもしれません。
でも、去年より、一昨年より振り返ってみると、その子なりに必ず成長している部分があります。
小さな変化や成長を見落とさず認めていくことも、子どもの自信を育む大切な関わりのひとつです。
その積み重ねは、将来の自己肯定感の土台にもなっていきます。
(※自己肯定感については、また別の機会に詳しくお話しします。)
次回は、「空気が読めない」「こだわりが強い」「急な予定変更が苦手」といった特徴が見られることもあるASD(自閉スペクトラム症)について詳しくご紹介します。
発達特性は一人ひとり異なり、ADHDと重なって見られることもあります。
ぜひ次回もご覧ください。